「DEMODAY2024~次世代通信によるスタートアップの躍進~」イベントレポート
「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosters Project)」および、「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」では、このたび、令和5年度の成果発信とこれからの5G・次世代通信技術の活用に向けた機運醸成として、「Tokyo 5G Boosters Project/Tokyo NEXT 5G Boosters Project DEMODAY 2024 ~次世代通信によるスタートアップの躍進~」を開催しました。
本イベントでは、パナソニックホールディングス株式会社の宮島勇也氏による大企業目線でのオープンイノベーション推進をテーマにした基調講演や、宮島氏と本事業採択事業者(令和3年度採択開発プロモーター)3社によるパネルディスカッションを実施し、大企業・スタートアップによるビジネス・イノベーション創出等について話題を及ばせました。その後、展示会・ネットワーキングを実施し、来場者との活発な交流もあり盛況なイベントとなりました。今回はそのレポートをお届けします。
イベント開催概要
開催日時 | 令和6年3月14日(木)14:30 ~ 16:40 |
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開催会場 | Tokyo Innovation Base (東京都千代田区丸の内3-8-3 SusHi Tech Square 2F) |
当日プログラム |
開会挨拶(収録動画)東京都副知事 宮坂 学 事業紹介
基調講演パナソニックホールディングス株式会社 基調講演者・開発プロモーターによるパネルディスカッション「スタートアップとの共働がもたらすビジネス創出への期待とは」 【パネリスト】
(※ 5G技術活用型開発等促進事業 令和3年度採択 開発プロモーター) 閉会閉会後、会場にて開発プロモーターが支援するスタートアップによる展示会を実施 |
開会挨拶
登壇者(収録動画) | 東京都副知事 宮坂 学 |
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東京都副知事 宮坂 学より開会のご挨拶の動画を放映しました。
事業紹介
登壇者 |
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5G技術活用型開発等促進事業・次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業の運営事務局を務める有限責任監査法人トーマツ中迫大輔氏から本事業の概要についてご説明しました。
また、令和2~4年度において5G技術活用型開発等促進事業に参画した開発プロモーターである、TIS株式会社水船慎介氏から同事業参画期間中の成果報告及び事業期間終了後の取組についてご紹介しました。
基調講演
「企業内新規事業はなかなか動かない!?ボトムアップから始めたオープンイノベーション」
登壇者 | パナソニックホールディングス株式会社マニュファクチュアリングイノベーション本部 ラピッドマニュファクチュアリング推進室 主幹 宮島 勇也 氏 |
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大企業でどのようにオープンイノベーションを推し進めてきたか、パナソニックホールディングス株式会社の宮島勇也氏から、ご本人の体験談も交えながら講演いただきました。
【基調講演概要】
2015年にパナソニックに入社した。ものづくりの研究開発部署で新規事業の支援、兼務で宇宙ビジネスを担当し、2023年にパナソニックの「グループ横断表彰」を受賞した。2024年には、同社チームとして、NHK総合の技術開発エンタテインメント番組「魔改造の夜」 にも出演した。
入社当初は、新規事業などを社内で提案しても採用されなかったため、趣味としてオープンイノベーションの活動を手掛ける中で、組織を超えて社内を縦横無尽に活動できるようになった。
こうした活動が注目されて、大学からの講演依頼やメディア取材を受けるまでにもなった。
新規事業立案を支援するコミュニティ「BOOST CONTEST」の発足
パナソニック内で、有志コミュニティとして、 「BOOST CONTEST」を立ち上げ、新規事業立案に挫折した人を支援している。社内メンターなどの助言も得ながら、社内から「本気で自社を、社会を変えていく人材(BOOSTer)」を生み出し、変革していくためのエコシステム構築を目指している。
パナソニックでの経験をもとに得たイノベーションを起こす組織風土を作るヒント
- 仲間作り:
「同じ課題解決しませんか」と共通の目標を掲げながら、新規事業を動かす仲間を少しずつ募る。実力はあるが、人脈のない、転職したばかりの社員などを仲間に集めることで、新規事業に理解のない会社の雰囲気を打破することができる。 - メンバーの主体性醸成:
チームメンバーへの指示を極力減らし、それぞれが自発的に役割を持って行動するように促す。リーダーの指示を受けて活動を行う「指示型組織」から、各メンバー主体で有機的に活動する「自律分散型組織」を目指すことで、しかたなくやる仕事から脱却することができる。 - 心理的安全性の確保:
新規事業などのアイデアを引き出すためには、組織の心理的安全性を保つことが重要である。そのために、相手の発言に対して否定から入る「No BUT」ではなく、「Yes AND」というコミュニケーションにより、組織内でアイデアの発散を促す。チャレンジして成功する体験を積み重ねることで、さらに新しいアイデアを誘発することが可能になり、自律的に行動できる組織になる。
令和3年度 開発プロモーター及び基調講演者によるパネルディスカッション
登壇者 |
5G技術活用型開発等促進事業 令和3年度採択 開発プロモーター |
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令和3年度に採択された開発プロモーター3社と基調講演を行った宮島氏を交えたパネルディスカッションを行いました。開発プロモーター各社からは本事業での取組を振り返ってのエピソードを共有いただき、宮島氏からは大企業視点で、各社のエピソードに対するフィードバックをいただきました。
トピック① 事業に応募したきっかけや当初の期待とギャップ
- ダイナミックマッププラットフォーム 市村氏(以下、DMP):
自社自身がオープンイノベーション志向であり、本事業との親和性があると思った。一方で、自力で進めるのはコストもかかるため、東京都の力を借りてスタートアップを支援するスキームに魅力を感じた。実際に事業に参画して、柔軟な取り組みができると感じた。 - ReGACY Innovation Group 森氏(以下、ReGACY):
スタートアップ、自治体が一体となってイノベーションを生み出せると考え、応募した。実際に、東京都の事業に採択されたことをきっかけに、大企業や自治体を幅広く巻き込みながら事業を実施できた。
トピック② 本事業で工夫した点
- ReGACY:
大企業で日本の経済が成り立っている中、大企業をいかに巻き込んでイノベーションしていくかを意識していた。 - 宮島氏:
パナソニックは、別事業でReGACYから支援を受けた経験がある。大企業としては、新規事業開発のやり方がわからないため、知見が豊富なReGACYのような会社からアドバイスをもらえると非常に心強い。 - インフォシティグループ 高野氏(以下、インフォシティ):
実証・実装の場として、二子玉川を選び、二子玉川学会との協力に重きを置いた。学会的な動きと連携することで、地域のプレーヤーとのフラットな関係構築ができた。地域のプレーヤーとの対話を重ねたことで、地域の課題として、水害対策や交通手段等に課題があることが分かった。また、住民との交流を通じて、ビジネスの関係を超えたつながりを持つこともできた。
トピック③ 本事業特有の苦労や、自社の弱みの克服
- DMP:
5Gの活用が求められる事業だが、スタートアップ側が5Gに対応した製品、サービスを創出する上で、そもそもの5Gが整っている環境(インフラ)が限定的であった。 - ReGACY:
実証実験でVR観光バスを走らせる時に、対象とした地域で5Gがカバーされていない場所があり、実証場所が限定された。
トピック④ 今後の展望
- ReGACY:
スタートアップへの伴走支援は継続し、また、会社としても投資機能を持っているため、金銭的な面でもサポートしたい。 - インフォシティ:
支援先スタートアップに共同出資するなどして、事業期間終了後も協業を続けていく。 - 宮島氏:
開発プロモーターの話を聞く中で、本事業は3か年の期間があるため、トライアンドエラーを繰り返すことができる点が印象的であった。イノベーション促進の観点から、このような事業スキームがさらに広がると望ましいと感じた。
【令和3年度 採択開発プロモーター】
展示会及びネットワーキング
「5G技術活用型開発等促進事業」及び「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」の開発プロモーターが支援するスタートアップによる展示会を実施しました。