「DEMODAY2025~次世代通信によるスタートアップの躍進~」イベントレポート

お知らせ

「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosters Project)」、および、「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」では、このたび、これまでの成果発信とこれからの5G・次世代通信技術の活用に向けた機運醸成として、「Tokyo 5G Boosters Project/Tokyo NEXT 5G Boosters Project DEMODAY 2025」を開催しました。

本イベントでは、通信ビジネスに造詣の深い株式会社 企 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授のクロサカタツヤ氏による「スタートアップによる5G・次世代通信を活用したビジネス創出への期待」をテーマにした基調講演や、本事業採択事業者(令和4年度採択開発プロモーター)2社による成果報告・パネルディスカッションを実施し、「スタートアップとの共働がもたらす5G・次世代通信を活用したビジネス創出の意義」等について話題を及ばせました。その後、展示会・ネットワーキングを実施し、来場者との活発な交流もあり盛況なイベントとなりました。今回はそのレポートをお届けします。

イベント開催概要

開催日時 令和7年2月14日(金)14:30~16:40
開催会場 TIS INTEC Group Innovation Hub
(江東区豊洲二丁目2番1号 豊洲ベイサイドクロスタワー32階)
当日プログラム

開会挨拶(収録動画)

東京都副知事 宮坂 学


事業紹介

  1. 本事業概要説明
  2. 令和3年度採択 開発プロモーター 成果報告

基調講演

「スタートアップによる5G・次世代通信を活用したビジネス創出への期待」
株式会社 企 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授
クロサカ タツヤ 氏


令和4年度採択 開発プロモーターによる成果報告・パネルディスカッション

「スタートアップとの共働がもたらす5G・次世代通信を活用したビジネス創出の意義」

【パネリスト】

  • 日清紡ホールディングス株式会社
    鵜戸 真也 氏
  • 株式会社マグナ・ワイヤレス
    斎藤 脩平 氏

5G技術活用型開発等促進事業 令和4年度採択 開発プロモーター

  • デロイトトーマツリスクアドバイザリー合同会社
    河﨑 麻衣子 氏(ファシリテーター)

閉会

閉会後、会場にて開発プロモーターが支援するスタートアップによる展示会を実施

開会挨拶

登壇者(収録動画) 東京都副知事
宮坂 学

東京都副知事 宮坂 学より開会のご挨拶の動画を放映しました。

東京都副知事 宮坂 学 氏 挨拶動画

事業紹介

登壇者
  • デロイトトーマツリスクアドバイザリー合同会社
    稲越 誠 氏
  • 株式会社ビットメディア(インフォシティグループ)
    高野 雅晴 氏
  • ダイナミックマッププラットフォーム株式会社
    市村 充弘 氏
  • ReGACY Innovation Group株式会社
    森 恭佑 氏

5G技術活用型開発等促進事業・次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業の運営事務局を務めるデロイトトーマツリスクアドバイザリー合同会社稲越誠氏から本事業の概要についてご説明しました。
また、令和3~5年度において5G技術活用型開発等促進事業に参画した開発プロモーターである、株式会社ビットメディア(インフォシティグループ)高野雅晴氏、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社市村充弘氏、ReGACY Innovation Group株式会社森恭佑氏から同事業参画期間中の成果報告及び事業期間終了後の取組についてご紹介しました。

株式会社ビットメディア(インフォシティグループ) 高野 雅晴 氏

開発プロモーターとして事業の進め方を柔軟に許容されている中、3年間インフォシティグループの強みを活かしながら支援を進めてきた。特に当社では、従来から開発を主体に実施してきた経験と、従来からオープンイノベーションを実現してきた実績、メディア技術・通信技術に関する知見を活かして事業を進めていた。
スタートアップを計6社支援する中で具体的には、MasterVisions社やTeleport社による二子玉川エリアや糸島(福岡県)を中心としたXR/IoT/生成AIプロジェクトや、stu社やFLARE SYSTEM社によるローカル5Gライブ制作やスマートスタジオプロジェクトなどを大企業と連携しながら推進してきた。現在は、Devcafeにおけるコミュニティ形成・情報発信や、電力・デジタル・通信を一体的に運営する「ワット・ビット連携」によって、電力システムのインターネット化を実現するために活動を進めている。


ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 市村 充弘 氏

当社も、グローバルで約200万キロのデジタルツイン道路データを保有している強みを活かし、開発プロモーターとして「5G通信×スタートアップ×モビリティ」による新サービスの提供を推進してきた。
大企業と連携しながら、ドローンやロボットに使用するカメラ、AR・XRなどの事業を持つスタートアップを中心に計5社を支援していた。具体的には、Blue innovation社による災害時における離島への支援物資輸送を実現するための実証実験や、xacti社による屋内環境において、人/ロボット装着のカメラから5Gを介しWebUI上で位置情報を可視化、管理できるアプリケーションを構築する実証実験を進めてきた。今後も、ダイナミックマップデータを活用しながらモビリティをはじめとした企業のアプリケーションに提供していくことを思案している。


ReGACY Innovation Group株式会社 森 恭佑 氏

サムライインキュベート社から2022年にスピンアウトした当社は、インキュベーションおよび官民双方のイノベーションについての知見を活かしながら、「AI・データ活用のケータイ化(≒民主化)」をビジョンとして掲げ、市民や事業者視点からも理解しやすいモデルケースの創出を目指し、開発プロモーターとして本事業を推進してきた。
大企業の課題をスタートアップの事業によって解決するという座組により、計6社のスタートアップの事業を社会実装させてきた。LOMBY社については、セブンイレブン社による自動配送ロボットの実証実験を端緒に、実際に社会実装が決定した。またAR技術を保有するGATARI社では、三菱地所社と連携したエンタメ領域での実証実験や、竹中工務店社と連携した病院などのインフラ領域の実証実験を実施し、どちらの領域でも社会実装が実現している。

  • デロイトトーマツリスクアドバイザリー合同会社 稲越 誠 氏 登壇風景
  • 株式会社ビットメディア(インフォシティグループ)高野 雅晴 氏登壇風景
  • ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 市村 充弘 氏 登壇風景
  • ReGACY Innovation Group株式会社 森 恭佑 氏 登壇風景

基調講演
「スタートアップによる5G・次世代通信を活用したビジネス創出への期待」

登壇者 株式会社 企 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授
クロサカ タツヤ 氏

Tokyo 5G Boosters Project/Tokyo NEXT 5G Boosters Projectの意義について、株式会社 企 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授のクロサカタツヤ氏から、5年前から本事業に携わってきていただいた視点を踏まえて講演いただきました。

【基調講演概要】

現在、世界各国の様々な場面においてデジタル化(デジタルトランスフォーメーション/DX)が実現しており、さらなるデジタル化の余地も十分に残されているため、今後もデジタル化の実現は普及していく。他方で、デジタル化の真価とは、効率化ではなく新しい成長を生み出すための「機会の拡大」にあることから、デジタル化をゴールとすることなく、その後どのようなアクションにつなげていくかが肝要である。

5G通信技術は、よりきめ細やかなデジタル化の実現に必要不可欠な技術要素である。通信技術が発展していくことが見込まれる中で、デジタル化にかかるデータの送受信に通信は活用されていくが、膨大に行われるデータの送受信のうち、5G通信技術等は真に価値のあるデータの送受信に活用する必要がある。


本事業におけるスタートアップの価値

本来、データの送受信にかかる通信技術の制限枠のうち、意味のないデータの送受信にかなり制限枠を割いてしまうことも多い。他方で本事業におけるスタートアップは、5G通信・次世代通信技術を活用した事業を展開するため、データが生み出される(得られる)段階から真に世の中のニーズに合致するデータを選別していく。このことから、スタートアップは通信技術をより良いデータの送受信に活用するために必要であり、デジタル化が加速する未来において重要な存在であるといえる。


デジタル化をさらに加速させていくために

デジタル化を加速させるために重要なスタートアップは、世の中にある真のニーズを把握することが必要であり、この点が最も困難である。そのため、泥臭く世の中にある真のニーズを探していくプロセスをいかに仕組み化し、コミュニティ化、エコシステム化できるかが肝要となり、スタートアップだけでなく、大企業や投資家など周囲のプレイヤーの協力が必要不可欠である。


本事業の意義と今後さらに期待すること

  1. 本事業の意義:
    本事業は、スタートアップとインフラを提供するキャリアや場所を提供するデベロッパーが連携することで、真にニーズがあり実現できることは何かを明らかにしながら実際に実現させていく、プロジェクトである。その点において、世界的にもあまり例を見ない珍しいプロジェクトである。また、デジタル化を加速させていくために必要なスタートアップの存在と周囲の多様なプレイヤーの協力が実現できるエコシステムの構築が可能な座組になっている非常に有意義な取り組みである。
  2. 今後さらに期待すること:
    コミュニティやエコシステムにおいては、各プレイヤー間にある壁をどう突破していくかが重要である。この壁を突破し、商売のタネにつなげていくためには、「日常の一歩先」という感覚が必要になってくる。そのため、いかに「雑談」できるか、「雑談」から連携が生まれるかなど、本事業としてのコミュニティのあり方が重要になっていく。

質問事項

5GSA(スタンドアローン)とセンサーの普及環境は何年後を目安に構築されるか
2020年代後半には、5GSAの環境は整備されているが、センサーの普及環境が整備されているかどうかは不明である。センサーは、その一体的な管理が困難となる可能性が高く、センサーネットワークを構築できるかが課題である。
また、複雑なセンサーの世界をよりスムーズに構築していくには、セキュリティ問題も併せて考える必要があるが、それを主導するプレイヤーとしては、デベロッパーやメンテナンス関連業種の企業が重要な役割を果たしていくと考えている。

  • 株式会社 企 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授 クロサカ タツヤ 氏 登壇風景①
  • 株式会社 企 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授 クロサカ タツヤ 氏 登壇風景②

令和4年度開発プロモーター及び基調講演者によるパネルディスカッション

登壇者
  • 日清紡ホールディングス株式会社
    鵜戸 真也 氏
  • 株式会社マグナ・ワイヤレス
    斎藤 脩平 氏

5G技術活用型開発等促進事業 令和4年度採択 開発プロモーター

  • デロイトトーマツリスクアドバイザリー合同会社
    河﨑 麻衣子 氏(ファシリテーター)

令和4年度に採択された開発プロモーター2社とパネルディスカッションを行いました。開発プロモーター各社からは、各支援スタートアップや本事業での取組についての説明の後、本事業を振り返ってのエピソードと本事業終了後の展望について共有いただきました。

発表

  • 日清紡ホールディングス株式会社 鵜戸氏(以下、日清紡)
    本事業では「5G×暮らす」をテーマに、超スマート社会の実現に向け計5社のスタートアップを支援してきた。特に、5G通信における「超高速大容量」という特性を主に活用しながら、インフラストラクチャー&セーフティ、モビリティ、ライフ&ヘルスケアを軸としたサービスを持つスタートアップを支援してきている。
  • 株式会社マグナ・ワイヤレス 斎藤氏(以下、マグナワイヤレス)
    本事業では、「医療・ヘルスケア領域」に貢献できる技術を持つ計5社のスタートアップを支援している。特に5G通信による「超高速大容量」という特性を活かしながら、大容量データの送受信やリアルタイム性を担保する必要がある技術・サービスを持つスタートアップを支援し、「医療・ヘルスケア領域」の課題解決に貢献してきた。

トピック① 本事業の枠組みだからこそ実現できた支援とその成果

  • 日清紡:
    本事業を進める中で、支援スタートアップであるMawari社とXLIVE社での連携など、親和性のある支援スタートアップ同士の連携を支援したことにより、相互の課題を解消しながら一つの事業を進めることができた。
  • マグナワイヤレス:
    3年間という長期間にわたる事業期間の中で、支援スタートアップに資金と技術を提供するのみではなく、支援スタートアップの事業やサービスを開発する段階から実際に事業化・上市していくまでを一体的に支援できた。

トピック② 支援するなかで苦労した点

  • マグナワイヤレス:
    事業をピボットしなければいけなかった点である。マグナワイヤレスが支援するスタートアップの領域である「医療・ヘルスケア領域」では、その製品・サービスに”高精度”がニーズとして求められる。そのなかで、製品・サービスの実現にはさらに長期間の開発期間が必要であるということが支援途中に発覚し、本事業での支援は頓挫した事業(Milk.社の唾液を基にした疲労度検査事業)がある。
    長期間の開発支援を実施し、提供したコストがあったことからも、事業のピボットが必要となった際には非常に悩んだ。しかしその頓挫した事業で開発した技術から、新たなサービスを生まれさせるという、技術を横展開させることによって、この苦難は克服していった。
  • 日清紡:
    ステラリンク社の動くサイネージ事業において、数多くの実証実験をこなしていく際に、準備活動や分析に苦労した。またその分析結果が思ったとおりの結果でなかった際は、この後のネクストアクションの取り方を悩んだ。

トピック③ 自社の強みを活かした事例の紹介

  • マグナワイヤレス:
    強みである通信技術を活かし、実証実験環境に通信環境を整備して、スムーズに実証実験を進めていった。
  • 日清紡:
    ローカル5Gの実験場や工場、施設などの多様なアセットを活用しながら、スタートアップの実証実験を進めることができた。また、スタートアップをプロモーションするという観点においても、展示会などを活用して支援をすることができた。

トピック④ 今後の展望

  • 日清紡:
    “無線”という自社の特徴を引き出す際に、ローカル5Gを活用してもその接続数によっては限界を迎えてしまう。そのためアプリによるデータの選別が必要になる未来が遠くないため、これらのデータの選別に通信をどのように活用していくかという視点に立ったアプリが登場してくることを期待している。また、現在支援しているスタートアップには、これまで日清紡グループ会社内で実証実験等を支援した繋がりがあり、引き続き今後もスタートアップとの良好な関係性を継続させていきたい。
  • マグナワイヤレス:
    離島などの通信環境が弱い地域においても、本事業におけるスタートアップのユースケースが波及していくと、5G技術を活用したサービスをさらに展開するための端緒となるのではないか。
    また、5G通信よりもさらに性能が向上した次世代通信技術をスタートアップに適用したうえで、スタートアップのサービスを展開できるように、引き続きスタートアップへの技術提供を実施していきたい。
  • パネルディスカッション 登壇風景①
  • パネルディスカッション 登壇風景②
  • パネルディスカッション 登壇風景③
  • パネルディスカッション 登壇風景④
  • パネルディスカッション 登壇風景⑤

【令和4年度 採択開発プロモーター】

展示会及びネットワーキング

「5G技術活用型開発等促進事業」及び「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」の開発プロモーターが支援するスタートアップによる展示会を実施しました。

  • 展示会風景①
  • 展示会風景②
  • 展示会風景③
  • 展示会風景④
  • 展示会風景⑤
  • 展示会風景⑥
  • 展示会風景⑦
  • 展示会風景⑧

当日の会場の様子

  • 会場風景①
  • 会場風景②
  • 会場風景③
  • 会場風景④
  • 会場風景⑤
  • 会場風景⑥